第83回研究会<2019/4/12>
乗松 優氏
ボクシング史料にみる日本とフィリピンの戦後
第83回「東南アジアの社会と文化研究会」を下記の通り開催します。
今回は、『ボクシングと大東亜--東洋選手権と戦後アジア外交』で、ボクシングを通じた戦後日本のアジア復帰の実相を明らかにしてきた乗松優先生に、ボクシング関連の個人文書が、人々の記憶とともにいかに日本とフィリピンの間、戦中と戦後を結びつけてきたかについてお話をしていただきます。
また、今回は『殴り合いの文化史』をまもなく上梓する樫永真佐夫先生をコメンテーターに迎え、研究者でありボクサーでもあるお二人を交えて白熱した議論ができればと思います。
オープンな研究会ですので、ぜひお気軽にご参集ください。
事前登録等の手続きは必要ありません。
また、研究会後には懇親会を予定しております。
2019年4月12日(金)16:00~18:00(15:30開場)
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
総合研究2号館4階 大会議室(AA447)
会場についてはこちらもご参照ください。
http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/about/access
乗松 優 氏
ボクシング史料にみる日本とフィリピンの戦後
『ボクシングと大東亜--東洋選手権と戦後アジア外交』(2016年・忘羊社)では、敗戦によって命脈を絶たれた日本のアジアに対する欲望が、スポーツの世界で再燃したことを明らかにした。「東洋」という伸縮自在の枠組みが大東亜を彷彿とさせながら、日本やフィリピン、タイ、韓国などの国々を巻き込んでいく有り様を当時の関係者から得られた証言や新史料に基づいて描き出した。
戦後日本のスポーツと言えば、力道山プロレスが代表格である。スポーツ史を扱う研究者の多くは、朝鮮出身者である金信洛が「日本人」として白人レスラーに空手チョップを浴びせかける姿に、戦後の倒錯した日米関係を重ね合わせた。しかし、同時期に反日感情が根強く残るアジア各国で「東洋一」を賭けて戦ったボクシングは、その歴史的な評価がなされないまま忘れ去られていた。
本発表では、戦後日本のアジア復帰を再考するきっかけになったボクシング史料に焦点をあて、家族アルバムや試合パンフレット、備忘録といった個人文書の意義について考える。第二次世界大戦の激戦地フィリピンと日本の間に存在したグローバルな結びつきを留める上で、これらの史料がいかに両国の集合的な記憶を保存し、再生するよすがになったのかを論じる。
樫永 真佐夫 氏