「東南アジアの社会と文化研究会」のお知らせ

第59回研究会<2013/5/24>
小池  誠氏
ジャワからみたスンバ社会: 関係性と戦略の人類学

第59回「東南アジアの社会と文化研究会」研究会を下記の通り開催します。オープンな研究会ですので、自由にご参加ください。事前の参加予約は必要ありません。

●日時

2013年5月24(金)16:00~18:00(15:30開場)

●場所

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
総合研究2号館(旧・工学部 4号館)4階会議室(AA447)

●話題提供者

 小池  誠氏(桃山学院大学

●発表要旨

 本発表では、インドネシア東部のスンバ島において1985年から今日まで続けてきた社会人類学的調査の成果にもとづき、公的領域(氏族と「家」)ではなく家内的領域(家族/世帯)に焦点を当て、人々がいかなる関係性(つながり)を活用して生存戦略を組み立てるのか、明らかにしたい。このようなテーマを設定した背景には、東部インドネシアを調査地に選んで社会人類学の研究を開始した後、ジャワ農村で家族/世帯の研究を進めたという発表者自身の調査経験がある。1998~99年にジョクジャカルタ特別区バントゥル県の農村社会で調査を実施し、さらに2007~10年に西ジャワ州カラワン県の日系工業団地に隣接する村落で社会変化と家族に関して調査を行った。ジャワの農村調査では、東部インドネシアとは違って、家族/世帯に焦点を当てた調査が不可欠である。
 発表は、以下のような三部構成をとる。第一に、1985~1988年に東スンバ県の中核村ウンガで実施した調査の成果にもとづき、公的領域に位置づけられる「家」(uma)とマラプ(祖先)祭祀との関係をまとめる。また、スンバ社会を論じる上で重要である縁組(alliance)と交換についても言及する。これらはまさに東インドネシア研究における典型的なテーマである。第二に、ジャワのバントゥル県とカラワン県で実施した世帯調査結果の一部(世帯構成など)を取り上げ、また村長など村落エリートの系譜的関係についても触れる。第三に、2010年以来、従来とは違ったアプローチで実施した東スンバ県のウンガ村とカダハン村における調査の成果を取り上げる。マラプ祭祀に関わる「家」という公的領域の相対的重要性が低下する一方、家内的領域の世帯が生計単位として、その重要性を増している。本発表では、とくに子どもの進学に注目し、父系親族関係や縁組関係(妻の受け手と送り手)だけでなく知人も含めて、どのような関係性が戦略的に選択されるのか考えたい。

[研究会世話人/事務局]
小林 知 (京都大学東南アジア研究所)
kobasa(at)cseas.kyoto-u.ac.jp