「東南アジアの社会と文化研究会」のお知らせ

第56回研究会<2012/7/27>
永井史男氏
タイ地方自治研究の10年: 定性的研究と定量的研究

第56回「東南アジアの社会と文化研究会」研究会を下記の通り開催します。オープンな研究会ですので、自由にご参加ください。

●日時

2012年7月27日(金)16:00〜18:00 (15:30 開場)

●場所

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
総合研究2号館4階第1講義室(AA401)

●話題提供者

 永井史男氏 (大阪市立大学法学部)

●発表要旨

配布資料

  報告者は2000年にJICA(国際協力機構)の専門家としてタイ内務省地方行政局に派遣され、自治体能力向上プロジェクトに実践的に関わるようになって以来、タイの地方分権・地方自治に関する政治学的な実証研究に取り組んで来た。タイをはじめフィリピンやインドネシア、さらには日本をはじめとする先進国の地方自治・地方分権に関する研究を横目でみながら、この10年間、タイの地方自治・地方分権をどう分析するのがよいのか、また意味のある問いの設定とは何なのかを、試行錯誤する時期でもあった。その時々の問題意識は、いくつかの媒体を通じて論文や報告書などで発表してきたが、依然としてまだ道半ばである。
 本報告では、過去に報告者が執筆してきた個別論文について論じるのではなく、もう少し風呂敷を広げ、タイにおける地方自治や地方分権を対象とした研究アプローチを自らのものも含めて批判的に考察し、今後どのような研究上の展望が開けるのかについて方法論や問いの設定まで射程に入れて、フロアの研究者とも有益な議論ができればと考えている。
 報告者は法制度的な自治体分析から研究を始め、ついで北タイのラムパーン県や東北タイのウボンラーチャターニー県などを対象としたケース・スタディに従事、近年は政治学における新制度論・合理的選択理論も踏まえた動態的な地方分権研究、さらには大規模サーヴェイ調査に基づく定量的調査も実施(2006年)・分析を行っている。現在も科学研究基盤研究(A)「東南アジアにおける地方自治サーヴェイ調査ータイ、インドネシア、フィリピンの比較」(平成21年~24年度、研究代表者・永井史男)によってタイ、フィリピン、インドネシアにおける地方自治体を対象とした定量的研究に従事している。これらの一連の研究アプローチの積み重ねと試行錯誤から、定性的研究と定量的研究との関係、タイだけでなくフィリピンやインドネシアの自治体を対象とした大規模調査の意義と問題点、政治学と地域研究との関係についても議論を及ぼしたい。
 

[研究会世話人/事務局]
片岡 樹 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
kataoka(at)asafas.kyoto-u.ac.jp

備考
・事前の参加予約は必要ありません。