「東南アジアの社会と文化研究会」のお知らせ

第53回<2011/12/9>
岡部真由美氏
開発の進展と共同性の再編: 北タイにおける仏教僧の事例より

第53回「東南アジアの社会と文化研究会」研究会を下記の通り開催します。オープンな研究会ですので、自由にご参加ください。

●日時

2011年12月9日(金)16:00〜18:00 (15:30 開場)

●場所

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
京都大学 稲盛財団記念館3階 「中会議室」
▼今回の会場は、京都市左京区吉田下阿達町46にある「稲盛財団記念館」にありま す。川端通りに面した建物です。その正面入り口からお入りいただき、右手の廊下を 進んで行きますと、3階にあがる階段とエレベーターがあります。

●話題提供者

岡部真由美氏(大谷大学社会学科)

●発表要旨

配付資料  添付資料

 20世紀以降のタイ社会の近代化、とりわけ1960年代頃から本格化した資本主義的開 発の進展を背景として、近年、上座部仏教の僧侶たちが、社会的な領域-エイズ、高 齢者、環境などに関する現実的課題の解決-において積極的な役割を果たそうとする 動きがみられる。従来、「開発僧」として注目される、こうした僧侶たちは、都市部 における新興教団の成立と拡大、瞑想、聖人信仰や護符の流行、地方における儀礼の 復興、といった宗教再生の諸現象と並行するかたちで、タイ国内の各地に、広く多様 な活動を展開してきた。
 本発表の目的は、このように、タイにおける現実的課題の解決に取り組む僧侶たち の活動について考察することを通して、彼らがもたらす上座部仏教の変容の一側面を 明らかにすることである。その際、北タイ最大の都市チェンマイ近郊のある寺院を事 例に、僧侶たちが「社会のため」の仕事と呼び、その寺院と地域社会を基盤としてお こなう活動を具体的に検討するとともに、それらをより大きな時間的・空間的広がり のなかに位置づける。
 事例の考察から、本発表が指摘するのは以下の二つの点である。すなわち第一に、 現実的課題の解決を目指す僧侶たちの活動は、開発という点で国家およびNGOからの 期待に応えると同時に、近代化・グローバル化のなかで次第に希薄化しつつある在家 者とのつながりを改めて取り戻そうとする試みである、ということである。また第二 に、僧侶たちは、サンガ(僧団)内における階層的な関係性に加え、開発という経験 や関心を共有することにもとづく「水平的な」関係性を生み出すことによって共同性 を再編しつつある、ということである。開発の進展に伴う急速な社会変化を生きる僧 侶たちは、サンガという従来の組織を媒介として、国家や地域社会と関わりをもつだ けでなく、実践をとおして新たなコミュニティをつくりあげようとしているのであ る。
 

[研究会世話人/事務局]
杉島敬志 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
takasugi(at)asafas.kyoto-u.ac.jp

備考
・事前の参加予約は必要ありません。