第51回<2011/6/17>
渡邊欣雄氏(中部大学国際関係学部)
「風水の科学技術史」
第51回「東南アジアの社会と文化研究会」研究会を下記の通り開催します。オープンな研究会ですので、自由にご参加ください。
2011年6月17日(金)16:00〜18:00 (15:30 開場)
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
稲盛財団記念館3階 中会議室
渡邊欣雄氏 (中部大学国際関係学部)
配布資料 沖縄風水史、 風水の科学技術史 、 方位測定具と時間測定具、 風水(玉尺)尺の事例
このテーマは、近年幾度となく発表を試みてきたテーマである。ただ、そのたびごとに内容は更新しており、以前よりわかりやすい内容になってきているものと思われる。本講演では、まず「風水」とは何かについて、中国と日本の過去の事例紹介から始まって定義を試みたい。
そもそも「風水」は後代の俗語で、古くは「地理」などと称して認識されてきた、東アジアや東南アジア諸地域の知識人の環境認識であり環境影響評価法だった。「風水」は古代の環境認識に留まらず、現代の占術として東アジア各国やベトナムなどでいまなお盛んに用いられており、その衰えを知らない。そこでわたくしが理解できる範囲で、この他者なる知識の一端を、われわれの科学知識に翻訳してみることが講演の目的である。
ただ予めお断りしておきたいのだが、「風水」そのものは「科学」でもなければ、むろん「迷信」でもない。わたしはこれまで先学の指摘にならって、「思想」(ものの観方考え方)と称してきた。「風水」というこの環境アセスメントには、いまもって「龍・穴・砂・水・向」の判断が基本とされる。しかし本講演ではそのうち、「向」(方位)の判断法に伴う科学技術史と、尺度の判断法について若干紹介するに留める。その環境判断全体は、われわれに共通するだろう知識としての「科学」にはとうてい翻訳不可能だからだ。
日本で「羅針盤」と称している方位盤は中国四大発明の一つとされ、中国古代の土圭法による「土圭」(後の時計)から発展して「司南」(指南)へ、そしてさらに「羅盤」へと変化を遂げた。航行具としての「羅針盤」もまた、「羅盤」の応用にすぎない。
ついでながらどこでお話しするか現段階では決めてないが、東日本大震災に因んで、18世紀に起きた「明和の大津波」に対する琉球王国の風水政策の一端を紹介してみたい。大津波後の復旧策として用いられたのは、国策としての風水判断だった。風水は当時の環境アセスメントだったからである。
[研究会世話人/事務局]
杉島敬志 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
takasugi(at)asafas.kyoto-u.ac.jp
備考
・事前の参加予約は必要ありません。