第33回 <2007/09/21>
飯國有佳子(国立民族学博物館・外来研究員)
「東南アジアにおける宗教とジェンダー研究の再考: ビルマにおける宗教実践の事例から 」
「東南アジアの社会と文化研究会」を、以下のとおり開催いたします。今回は、東南アジア学会関西例会と共催です。 オープンな研究会ですので、ふるってご参集くださるようお願いいたします。
2007年9月21日(金) 16:00−18:00
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
工学部4号館 4階会議室(AA447)
飯國有佳子(国立民族学博物館・外来研究員)
加藤眞理子(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
東南アジアのジェンダーを語る際、よく聞かれるのは、女性の地位が相対的に高いという説明である。その際、経済活動への参加度、親族組織、相続形態などが、地位の高さを示す事例として持ち出されてきた。一方で、仏教やイスラームなど宗教の如何を問わず、女性は宗教的・象徴的に劣位におかれているとも言われている。
このうち、前者のように女性の地位の高さを強調する場合には、宗教上の劣位は触れられないか、例外扱いされてきた。他方、女性の宗教上の劣位を主張する後者の研究では、教理的理解が前面に押し出されてきた。そのため、宗教が実践される場におけるジェンダーは捨象されることが多かった。また、教理を過度に重視するあまり、政治や経済など、宗教とは直接かかわらない場のジェンダーをも、教理によって説明しようとする試みもみられた。ここから東南アジア、特に大陸部のジェンダー研究は宗教の適切な位置づけに苦慮してきたと言うことができるだろう。しかし、当該社会のジェンダーを考える上で、宗教は外すことのできない重要なテーマのひとつである。ジェンダーと宗教をめぐるこうした問題を乗り越えるにはどうすればよいのだろうか?
本報告では、こうした問題への接近を試みるために、ビルマにおける女性の具体的な宗教実践を事例として取り上げる。なぜなら、これまでの宗教に関連するジェンダー研究の多くが、経典に見られるようなジェンダー規範に依拠するかたちで当該社会のジェンダーを考えてきた。そのために、女性の具体的な宗教的行為には十分な光が当てられず、結果として宗教を適切に位置づけることができなかったと考えられるからである。さらに、女性の宗教実践に注目する際には、その実践を安易に経典を持ち出して説明するのではなく、それらを規範とした実践を行う個々人の立場から捉える必要があるだろう。発表では、宗教的・社会的権威の承認が最も顕著なかたちで現れる儀礼の場における実践と、それをとりまく日常的な場における女性の行動や語りを扱うことで、個々の女性がいかに宗教的・社会的権威に服従し、それをどのように読み替え、時に権威に対抗するような実践を行っているのかを明らかにする。
このように、儀礼や日常生活などの具体的な宗教実践の場において、女性がいかに宗教を生きているのかに着目することを通して、これまでの東南アジア大陸部における宗教とジェンダー研究の再考を試みてみたい。
[研究会世話人/事務局]
杉島敬志 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
林 行夫 (京都大学地域研究統合情報センター)
速水洋子 (京都大学東南アジア研究所)
伊藤正子 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
王 柳蘭 (京都大学大学院・アジアアフリカ地域研究研究科)