第22回 <2005/03/25>
吉本 忍 (国立民族学博物館 )
「テキスタイルに見る東南アジアの特殊性と普遍性」
第22回定例研究会を下記の通り開催します。今回は、国立民族学博物館の吉本忍さんが、東南アジアの機織り文化の独自性と普遍性について隣接諸地域との比較の観点から報告します。多くの方の参加をお待ちしています。研究会終了後、懇親会を行いますので、こちらにも振るってご参加下さい。なお、今回は事情により開催が第四金曜日になっています。ご了承ください。
2005年3月25日(金) 16:00−18:00
京都大学東南アジア研究所 共同棟3Fセミナー室
吉本 忍(国立民族学博物館)
テキスタイルという物質文化を切り口として東南アジアを眺めて見ると、この地域は言語人類学の民族分類を超越した特殊な機織り文化圏として浮かびあがってくる。
世界の伝統的な機織り技術を俯瞰したとき、東南アジアの機織り技術は、環太平洋とその周縁地域に展開する腰機をともなった機織り文化圏のうちに包括される。そうしたなかにあって、東アジアと東南アジアの機織り文化はともに中国を起源地とした機織り技術の伝播によって発展してきたと考えられる。しかし、両地域の機織り文化の起源は同一とは考えられない。このことは東南アジアとその周縁地域における機織り文化の基層に、輪状の織物を織るという機織り技術があったと考えられるものの、東アジアの機織り文化の基層には、輪状織物の痕跡がまったく見いだせないことによる。
一方、東南アジア機織り文化圏では、イカット(かすり)や縞織物や紋織物などが普遍的に織られてきた。それらの織物のデザインについては、民族ごとに独自性が見いだされる。しかし、インドネシアのジャワ島を中心として局地的につくられてきたバティック(ジャワ更紗)については、デザイン・ソースのほとんどすべてが海外からもたらされたものであるという特殊性をそなえている。そしてさらに、そのデザインは近・現代の熱帯アフリカや東南アジアにおけるファッション素材であるプリント・テキスタイルの普遍的なデザインとして展開している。なお、そうした背景には産業革命以降のイギリスをはじめとするヨーロッパ、そしてインドと日本のテキスタイル業界の関与があり、さらに現代においてはタイや中国のテキスタイル業界も深く関わっている。
*この研究会は原則として奇数月の第三金曜日に開催されます(ただし今回は第四金曜日)。7月は夏休みとし、研究会は開催しません。研究会の案内はメールを通じて行っています。お知り合いの方、とくに学部生・院生・若手研究者に、このメールを転送するなどして、案内リストへの参加をお勧めいただければ幸いです。案内リスト参加希望者の連絡先は、nagatsu@asafas.kyoto-u.ac.jpです。
[世話人]
杉島 敬志(京大大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
林 行夫(京大地域研究統合情報センター)
[事務局]
速水洋子(京大東南アジア研究所)yhayami@cseas.kyoto-u.ac.jp
長津一史(京大東南アジア研究所)nagatsu@cseas..kyoto-u.ac.jp