「東南アジアの社会と文化研究会」のお知らせ

第16回 <2004/01/16>
平松秀樹 (大阪大学大学院)
「タイ現代文学にみる<女性の解放>及び<業からの解放>: セーニー・サオワポンの作品から」

 第16回定例研究会を下記の通り開催します。今回は、大阪大学大学院で比較文学を専攻されている平松秀樹さんが、タイにおける現代文学の変容と、作家の政治社会的意識の覚醒の過程について報告します。多くの方の参加をお待ちしています。研究会終了後、懇親会を行いますので、こちらにも振るってご参加下さい。

発表要旨

●日時

2004年01月16日(金) 16:00−18:00

●場所

京都大学東南アジア研究センター 東棟2F教室

●話題提供者

平松秀樹(大阪大学大学院)

●発表要旨

 タイの現代作家セーニー・サオワポン(1918−)は、『ワンラヤーの愛』(1953)において、タイ古典文学より延々と続くタイ女性像を打ち破り、伝統的価値観や社会の精神的腐敗を批判して女性の解放を目指した。続く『妖魔』(1954)では、業の通俗的観念で縛られた封建的社会体質の桎梏からの主体的・精神的覚醒を促している。それらの背景には、立憲革命(1932)前後より本格化するタイ近現代文学における作家の社会に対する鋭敏な意識と態度がある。政治的社会的不安定は、セーニーの文学者としての社会意識を鮮明なものにし、その立場は「人の飢餓のために死んでいっている時、月の美しさはなんの役に立とう。芸術家の責務は悲惨な光景を直視するところにある」というある批評家の言葉に集約され得る。
 本発表では、元ビルマ大使で1990年度タイ国国民芸術家賞も受賞したセーニーの上記2作品を中心に、彼が対峙したタイの社会体質の問題点を文学の立場から探ってみたい。

*この研究会は原則として奇数月の第三金曜日に開催されます。なお、7月は夏休みとし、研究会は開催しません。研究会の案内はメールを通じて行っています。お知り合いの方、とくに学部生・院生・若手研究者に、このメールを転送するなどして、案内リストへの参加をお勧めいただければ幸いです。案内リスト参加希望者の連絡先は nagatsu@asafas.kyoto-u.ac.jp です。


[世話人]
加藤 剛(京大大学院AA研究科)
林 行夫(京大東南アジア研究センター)

[事務局]
長津一史(京大大学院AA研究科)nagatsu@asafas.kyoto-u.ac.jp
速水洋子(京大東南アジア研究センター)yhayami@cseas.kyoto-u.ac.jp